ノーリフトとは…?
ベッドから起きる、車椅子へ移る、お風呂に入る、ベッドへ戻る…、などなど、介護現場で働くひとたちが身体を酷使するさまざまな場面に、多くの機器や福祉用具、またはその他新しい技術を導入することによって、「抱え上げない、持ち上げない」介護を目指すものです。
こうした取り組みは、オーストラリア・ヨーロッパ・欧米など他国では比較的広く認知されながら、日本においてはまだまだ普及していないという現状です。
そうしたなか、託麻会では地域からこうした取り組みを広げていくために、障がい福祉、高齢者福祉、の両事業において、この「ノーリフト」の取り組みを導入し、実践・推進をおこなっています。
導入のメリット
ノーリフト・介護を提供するうえで
ノーリフトを実践するにあたって、やはり大きなメリットは「職員の身体的な負担を軽減する」ことにあります。具体的にはなにより「腰痛予防」というのがいちばんの目的です。
社会福祉施設で働くひとたちにおいて、腰痛は一種の「職業病」として、働くうえで腰の痛みをかかえることは半ば「仕方ないこと」とされます。またそのために、腰痛をいかにコントロールするか、長引く腰痛といかに付き合うか、といった部分におおく焦点は向けられます。
ノーリフトの取り組みは「抱え上げない、持ち上げない」を目標とします。 介護を提供する側は、機器や福祉用具の使用によって、こうして身体に負担のかかるさまざまな介助を「簡単に、楽に、安心して」行い、また腰痛悪化、腰痛への不安、をなくすことが可能となるのです。
ノーリフト・介護を受ける方々
また、こうした取り組みは、介護を提供する側にとってのみではなく、介護を受ける利用者の方々にも大きなメリットと安心があります。
「福祉機器を使用してベッドから車イスへ移る」場合と、「従来のように抱える介助を行ってベッドから車イスへ移る」場合を、例にとって考えてみます。以下の写真をご覧ください。
「リフト機」は体をまるごと「面」で支えた状態で車いすへ移るのに対し、「抱え上げ」を行う場合は、いかに習熟した介助動作であっても、体を支えているのはやはり「点」です。
安定した体位で介護を受ける場合と、不安定な体位で介護を受ける場合、このふたつを比較したとき、介護を受ける方々の立場からみれば、「リラックスできて、安心して受けられる介護」は、やはり安定した姿勢を保持できる福祉機器を使用した場合であると言えるでしょう。
抱え上げられ、不安定な体位を保持すれば、介護を受ける方々は少なからず恐怖を感じ、力を入れ、身構えてしまいます。その体の緊張/こわばりは「拘縮(関節が硬くなり、動きが悪くなる状態のこと)」へとつながります。
その点において、ノーリフトの取組みは拘縮予防にも効果的であると言われており、実際に、抱え上げることによる介護を一切やめると体の緊張が和らぎ、体を動かす自由度が上がったという例もみられています。
しかし、これからの介護現場の主流は、やはり「持ち上げない介護」です。
介護を提供する職員はできるだけ体に負担をかけず、また介護を受ける方々へ「安心・安全」を提供するこの取り組みを託麻会では導入し、推進しています。